CRM業界AI可視性ランキング 2026年3月版:
上位4社とその他を分けた3つの構造
airecoでは、主要CRM 10社について、AIアシスタントに関連クエリを投げた際の可視性を計測し、CRM業界 AI可視性ランキング 2026年3月版として公開しました。
今回のランキングを分析すると、単なる順位表だけでは見えない構造がいくつか見えてきました。特に大きいのは、上位4社への可視性集中、HubSpotだけが獲得した「推薦」、そして国産CRMの明暗です。
順位そのものを見るだけでも意味はありますが、本当に重要なのは、AIが自社をどの文脈で扱っているかです。本記事では、公開ランキングから読み取れる範囲で、その構造を整理します。
まず押さえるべき結論
今回のランキングから、まず3つのポイントが見えます。
- 上位4社と5位以下の間には、単なる順位差ではなく「出現の安定性」の差がある
- 最高評価である Recommended を獲得したのはHubSpotのみだった
- 名前は出るが比較候補に入れない企業群には、大きな改善余地がある
この3点は、今後AI可視性を改善していくうえで重要な示唆になります。
1. CRM業界のAI可視性は「2層構造」になっている
上位4社は常にAIの候補に入る。5位以下はクエリ次第で消える。この差はスコア以上に大きい。
今回の計測では、HubSpot、Salesforce、Zoho CRM、kintoneの上位4社が相対的に安定して可視性を確保していました。これに対して5位以下の企業群は、クエリによってはまったく出現しないケースが目立ちます。
ここで重要なのは、差が単なる順位差ではないことです。上位グループはAIが継続的に候補として扱う企業群であり、下位グループは聞かれ方次第で存在しないことになる企業群です。
この違いは、見た目のスコア以上に大きい意味を持ちます。AI経由の比較検討が増える中で、毎回候補に入る企業と、質問次第で消える企業では、商談機会の量そのものが変わってくるからです。
自社がどちらの層にいるかは、単に順位を見るだけではなく、どのクエリで継続的に出ているかまで見ないと判断できません。
2. 「推薦」を獲得したのはHubSpotだけだった
比較候補に入ることと推薦されることは別物。その差は知名度ではなく「文脈との結び付き」にある。
今回の計測で、最高評価である Recommended を獲得したのはHubSpotのみでした。対象となったのは、MA連携に関するクエリです。
他の上位企業も多くのクエリで Compared には入っています。つまり、AIはそれらを有力な比較対象として認識しています。ただし、最適解として強く押し出すところまで到達したのはHubSpotだけでした。
この結果が示唆しているのは、AIにおける可視性は単なる知名度だけでは決まらないということです。特定の文脈において、何の強みを持つ企業として認識されているかが大きく影響している可能性があります。
逆に言えば、自社が比較対象には入るのに推薦されない場合、問題は「知られていない」ことではなく、文脈と強みの結び付きが弱いことかもしれません。
3. 「顧客管理」クエリは間口が広いが、差別化は起きにくい
広いカテゴリ語では多くの企業が並ぶが、それだけでは選ばれる理由にならない。
今回の分析では、顧客管理系の基本クエリで多くの企業が言及されました。これは、広いカテゴリワードではAIが幅広い製品を候補として扱う傾向を示しています。
一方で、そこで強い差別化が起きていたわけではありません。上位企業であっても、この種のクエリでは Compared や Recommended ではなく、Mentioned に留まるケースが見られました。
つまり、一般的なカテゴリ認知だけでは優位を作りにくいということです。多くの企業名が並ぶだけの状態では、比較検討の入口には立てても、選ばれる理由までは作れません。
AI可視性を本気で高めるなら、広いカテゴリ語で出ることに加えて、特定の強いユースケースで選ばれることが必要になります。
4. 専門クエリでは可視性格差が一気に広がる
専門性が上がるほど、AIは「この文脈ならこの企業」と絞り込む。総合順位だけでは見えない差がここにある。
その傾向が最も強く出たのが、MA連携のような専門性の高いクエリです。こうしたクエリでは、上位企業に可視性が集中し、下位企業の多くは候補にすら入りませんでした。
これは重要です。AIは、汎用的な問いには広く答える一方で、専門性が上がるほど、この文脈ならこの企業という認識を強く持つ傾向があります。
そのため、総合順位だけを見ていると見落としますが、実際にはどのクエリ群で勝てていて、どのクエリ群で消えているかが戦略上はもっと重要です。
自社が落としているのが、基本クエリなのか、比較クエリなのか、専門クエリなのかで、打つべき施策は大きく変わります。
5. 国産CRMではkintoneが上位、他社は苦戦
差はプロダクト力より「AIが参照しやすい形で情報が整理されているか」に出ている可能性がある。
国産CRMの中では、kintoneが上位グループに入りました。一方で、他の国産勢は名前は出るが比較候補に入り切らない、あるいはクエリによっては出現しない状態が目立ちます。
この差は、単純なプロダクト力の差というより、AIが参照しやすい形で情報が整理されているかの差を反映している可能性があります。
AIが候補に挙げやすい企業は、カテゴリ、用途、比較軸、導入対象、周辺機能といった情報が、モデルにとって扱いやすい形で存在している傾向があります。逆に、それらが曖昧だと、存在は認識されても比較候補まで上がりにくくなります。
これは国産企業に限った話ではありませんが、特に日本語B2B市場では可視化されにくい差です。
名前は出るのに選ばれない企業には、大きな改善余地がある
AIに名前を知られているなら、情報設計次第で「比較候補」への格上げは狙える。
今回のランキングで特に注目すべきなのは、Mentioned が多い企業群です。これは、AIがその企業の存在自体は認識していることを意味します。一方で、比較候補や推奨候補としてはまだ弱い状態でもあります。
この状態は、まったく出ないよりは前進していますが、事業上の価値としてはまだ不十分です。比較検討の文脈で選ばれるには、知っている企業から検討すべき企業に認識を変える必要があります。
見方を変えると、ここは改善余地が最も大きい領域です。AIがすでに名前を知っているなら、適切な情報設計とコンテンツ整備によって、Mentioned から Compared への移行が起こる可能性があります。
airecoの詳細診断では、こうした「言及止まり」の状態がどのクエリで発生しているか、競合がどの文脈で比較候補に入っているかを確認できます。
公開ランキングでは分からないこと
順位は入口。意思決定に必要なのは「なぜその位置か」と「どこから改善するか」。
今回の公開ランキングで分かるのは、今どの企業がどの程度AIに見えているかという事実です。一方で、次のような問いには、公開データだけでは答えられません。
- なぜ自社の順位がその位置なのか
- どのクエリで取りこぼしているのか
- 競合はどの文脈で比較候補に入っているのか
- どこから改善すると最も効果が出るのか
ここから先は、公開ランキングではなく診断の領域です。順位を知ることは入口に過ぎず、実際に意思決定に必要なのは原因と優先順位です。
まとめ
今回のCRM業界AI可視性ランキングから見えたのは、順位の上下以上に、AIがどの企業を継続的に候補として扱うかの構造でした。
名前が出るだけで十分なのか。比較候補に入りたいのか。それとも、特定文脈で推薦される企業になりたいのか。
この違いによって、打つべき施策は変わります。今回のランキングは、その現在地を知るための入口です。